12 :名無しさん 23/12/05 18:46 ID:Ri1.j6OILw (・∀・)イイ!! (1)
 おおかみは、心の中でかんがえていました。
 「わかい、やわらかそうな小むすめ、こいつはあぶらがのって、おいしそうだ。ばあさまよりは、ずっとあじがよかろう。どうやってたべるか、くふうがかんじんだ。」
 そこで、おおかみは、しばらくのあいだ、赤ずきんちゃんとならんであるきながら、道みちこう話しました。
 「赤ずきんちゃん、まあ、そこらじゅうきれいに咲いている花をごらん。ほら、小鳥も、あんなにいい声で歌をうたっている。」
 そういわれて、赤ずきんちゃんは、あおむいてみました。すると、お日さまの光が、木と木の茂った中からもれて、どの木にもどの木にも、きれいな花がいっぱい咲いているのが、目にはいりました。そこで、
 「あたし、おばあさまに、げんきでいきおいのいいお花をさがして、花たばをこしらえて、もってってあげなきゃ。おばあさん、きっとおよろこびになるわ。」
 と、こうおもって、ついと横道から、その中へかけだしてはいって、森の中のいろいろの花をさがしました。そうして、ひとつ花をつむと、その先に、もっときれいなのがあるんじゃないか、という気がして、そのほうへかけて行きました。そうして、だんだん森のおくへおくへと、さそわれて行きました。
 ところが、このあいだに、すきをねらって、おおかみは、ふところから小さなカメラのようなものをとりだしました。これは、じつはカメラではなくマルチスキャナで、ぶったいの原子レベルまでの三次元こうぞうを、すべてきろくできてしまうというすぐれものです。そして、こちらに背をむけている赤ずきんちゃんを、全身くまなくスキャンし、データをきろくしてしまいました。

 データさえとれれば、本人はいなくてもかまいません。おおかみは、すたこらすたこら、じぶんのうちへとかけもどりました。そして、さいきん買ったばかりの、さいしんのフードプリンターに、さっききろくした赤ずきんちゃんのデータを入力し、これをそのまま出力するようしじしました。
 出力された赤ずきんちゃんのコピーは、ふしぎそうにまわりを見まわします。
 「あれっ? さっきまで森にいたのに、ここはどこなんでしょう?」
 「ここは、おれのうちさ」と、おおかみはこたえます。
 「おおかみさんのおうち? あたし、どうしておおかみさんのおうちに来たの?」
 「それは、おまえは赤ずきんのオリジナルじゃなくて、あのフードプリンターでコピーしたものだからさ」
 そういうと、おおかみは、いきなり赤ずきんちゃん(コピー)のふとももにかみついて、その肉をかみちぎりました。
 「きゃああああああああああ!!!!!」あまりのいたさに、コピずきんちゃんは大きなひめいをあげます。
 「おお…、やっぱりわかいおんなは、あぶらがのっててうまい」おおかみはごまんえつです。

 1じかんほどかかって、おおかみはコピずきんちゃんをぜんぶたべてしまいました。

 もちろん、いきたままのちてきせいめいたいを、フードプリンターでコピーするのははんざいです。フードプリンターじたいにも、そんなことができないようプロテクトがかけられています。
 しかし、おおかみには、そんなことはかんけいありません。おおかみは、ひとざとはなれた森のおくで、ひとりでくらしているのです。リバースエンジニアリングでプロテクトをかいじょしてしまえば、おおかみのおこないをとがめるものは、だれもいませんでした。
 おおかみがコピずきんちゃんのあじにあきるまで、何十人のコピずきんちゃんがぎせいになったのか。
 それは、だれにもわかりません。

 


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